イフリータ

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イフリータ。それは、炎を統べる女王――。

リストリア皇国はメリア州都ヒース。対『レナ』組織、“公安”の新人隊員マイロ・レミオンは、所属となったヒース公安隊で赤髪赤目の少女と出会う。公安隊員から“女王陛下”とあだ名なされる少女は、炎のような出で立ちそのまま、ヒース公安の“炎の女王”だった――。

解説

サイエンスファンタジー略してSFの近未来ファンタジー小説です。語り手の視点から主人公像を語る短編連作形式、一話五千文字から一万字を数本収録し、基本は第一巻、最低でも第一話だけ読めば、あとはどの話をどの順番で読んでもOK、という構成をとっています。ネット公開なし、書籍本のみの公開となります。

試し読み(一巻収録話、『イフリータ』より抜粋)

 これは、私の物語ではありません。私の良きパートナー、リオ・フェルミィの物語です。

 私、マイロ・レミオンがリオと出会ったのは、メリア州都ヒース公安隊に配属が決まったその日のことでした。三ヶ月の基礎訓練を終了させ、ヒース公安隊ガルバニア本部長に着任の挨拶を済ませ、ヒース公安隊の現場責任者であるデュマ隊長に、じきじきにヒース公安本部を案内していただいていた時のことです。
「すると、娘さんの心臓の治療費を捻出するため公安に?」
「はい」
 甲斐性のない父親で不甲斐ないばかりです、と苦笑して、金色に透ける光の羽をきらきらと輝かせながら掃除をしている人造妖精を横目に、私はデュマ隊長に話したものでした。
「最近になって治療法が確立された病であったことは幸いでしたが、治療には多少特殊な手術が必要で。生活に不自由はさせていませんでしたが、高額医療費までは賄えませんでした」
 そうか、とデュマ隊長はそっと笑い、私に尋ねました。
「では、娘さんと夫人は首都に残して?」
「私はそのつもりだったんですが、二人とも付いていくと言って聞かなくて。娘の術後回復も良好でしたし、家族でヒースに越してきました」
「それでは意地でも、出動後は帰らなければならないな」
 からかうように隊長は言い、私は「はい」と笑いました。
 廊下を先に立って歩きながら、微笑ましいものを見る目で隊長は笑み、気を取り直したように私に言いました。
「経歴に基礎訓練の成績は確認させてもらった。十八の歳から二年の兵役後に三年を皇国軍狙撃隊で過ごし、結婚を機に退役。退役後は民間の射撃訓練場で指導員を四年務める。まあ経歴に似合う成績だ。特に狙撃に関しては新人の域を越えていると評価がついている」
「光栄です」
「恥ずかしながら、ヒース公安隊は狙撃兵の育成が遅れていてね。今訓練中の隊員がものになるまでもう少しかかる。その間、頼りにさせてもらうよ」
「精一杯努めさせていただきます。……ところで、我々は今、どこへ向かっているのですか?」
 温厚な人柄はにじませながらも、はっきりと切れ者、智将であると風体が物語るデュマ隊長は、しかしこの時は温厚な人柄を前面に出しました。
「隊員詰所だよ。一通り施設は案内したが、肝心の隊員仲間への挨拶がまだだろう。それに、君のパートナーとも引き合わせなければね」
「パートナー、ですか」
 そうだ、と隊長は笑んで言いました。
「公安隊の行動単位は最小で二人一組だ。単独行動は推奨されていないんだが、一人だけ、パートナーが定まっていない隊員がいてね。君には彼女と組んでもらいたい」
 彼女、ということは女性か、と少し意外に思ったことを覚えています。好奇心のままに、私は尋ねました。
「ヒース公安隊に、女性隊員は何名いらっしゃるんですか」
「いないわけではないが、多くはない。後方支援や医療班に何名かを数える程度、戦闘部隊に至っては彼女一人だ。ヒース公安の女王陛下だよ」
「女王陛下?」
 訝しむ私には含み笑い一つを返し、隊長は「さあ」と私を促しました。
「ここが隊員詰所だ」

宣伝動画

書影

刊行情報

『イフリータ』
『イフリータ2』

いずれもBOOTHにて頒布中

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